様々な物質を生み出すこととなった海は、やがて私たち生物の祖先となるものも生み出した、と考えられています。

冒頭の「『食べる』をみつめる」で、すべての生物の共通祖先「LUCA」のお話をしましたね。LUCAの誕生は未だ多くの謎につつまれていて、その謎に迫ろうと今でも多くの科学分野からのアプローチが行われています。その中で、多くの科学者が、極力、偶発的な力を除き、多少時間はかかっても、地球にある素材で、次第に生命の元になるものができていったのでは、と考えています。

このような考えの主軸となる説に、『化学進化説』というものがあります。ロシアの学者オパーリン(1)によって、提唱された説です。オパーリンは、その場が海であったのでは、と考えました。

この他にも、多くの仮説があり、たとえば、宇宙から飛んで来た飛来物に付着していたものが生命の起源になったのでは、という、宇宙飛来説があります。オパーリン自身も、宇宙飛来説を考慮した上で
化学進化説を導いた、とされていますから、他の仮説もけして完全否定はできません。
生物誕生の謎は、かならずしも生物学だけでは、充分な解答は導けないかもしれないのです。


Aleksandr_Oparin_and_Andrei_Kursanov_in_enzymology_laboratory
Aleksandr Oparin and Andrei Kursanov in enzymology laboratory 1938
 
 
さまざまな説が存在するなか、多くの研究者は、原始の地球の姿を推測し、様々な実験(2)をしました。その結果、当時そこに存在したであろう状況や物質から、生物の誕生に必要なものが合成できることが、これまでに証明されています。ユーリーとミラーの実験は最も有名なものでしょう。


実験によって、地球上で生命をつくる成分の合成が可能であったことが証明されたことは、LUCAに近づく大きな一歩でした。とはいえ、これらは、あくまで材料、物質であって、生物ではありません。
そもそも、生物とは何をもってして、「生物」とするのでしょう。
実は、この問いにおいても、未だに正確な定義はなされていないのです。

ですから、材料が揃うことがわかっただけで、一体なにが、生物をつくる力となったのか、そして、生物とは何か、という問いには、まだ答えが出ていないのです。



※(1)オパーリンの化学進化説
(オパーリンによる出版物:1924年小冊子、1936年、『生命の起源』出版、1957
年、『地球上の生命の起源』出版)
彼は生命の発生のために下記のような物質進化の4段階が必要であると考えた(1957年)。 
第1段階:炭化水素および簡単な有機化合物の生成
第2段階:アミノ酸,ヌクレオチド,炭水化物などのより複雑な有機化合物の生成
第3段階:タンパク質様物質,核酸様物質などの高分子物質の生成
第4段階:代謝が可能な高分子物質からなる多分子系の生成


※(2)粘土説、ユーリー-ミラーの実験など
海に溶けた物質の中には、波打ち際に打ち寄せられたり、また海底の噴火口など、特殊な場所にいきつくものも出て来ます。すると、またその特殊な環境下であらたな化学変化をし、新たな物質が誕生したと推測されています。
生命の起源は、その場が海であったとする説(その中には、海底とするもの、波打ち際、粘土層などの詳細な違いはある)や、大気中であった、とする説もある



参考:Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/生命の起源)
   Wikipedia(http://ja.wikipedia.org/wiki/共通祖先)
  放送大学 初歩からの生物学 第2回「生物の特性」2014.04.14放送
  啓林館センター試験対策問題集のご案内(http://keirinkan.com/kori/kori_biology/kori_biology_2/contents/bi-2/3-bu/3-2-1.htm)

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